腰椎椎間孔狭窄症は、足にいく神経が腰椎から出てくる穴の部分が狭くなり、神経が圧迫されて起きる病気です。ひどい腰痛や下肢痛を起こす場合には、手術が必要になります。本稿では、この手術について、次の内容で解説します。
- 椎間孔狭窄症の手術は低侵襲で安全です。
- 手術の成功率は高く、劇的な改善も期待できます。
- 正しい診断を受けて、経験のある医師の手術を受ける必要があります。
1.椎間孔狭窄症の手術は低侵襲で安全です
腰椎椎間孔狭窄症の手術は、圧迫された神経周辺の骨を削り、神経を圧迫のない状態にします。ですので、実際に削る骨は、神経周辺の小指の先ほどの大きさの部分になります。
手術は、全身麻酔で2時間ほどで終了します。腰の部分に5cm程度の切開をおいて、顕微鏡で拡大しながら行います。とても侵襲の少ない手術なので、80代の方でも手術を受けることができます。
骨を削る際には、超音波骨メスという道具を使います。これは、金属の先端を超音波で振動して骨を削る道具で、神経を痛めることなく、安全に骨を削るのに有用です。
実際の手術前後のCTスキャンの写真をお見せします。とても低侵襲に、神経がピンポイントに除圧されているのがわかります。

もちろん、手術ですから、リスクがゼロというわけにはいきません。手術中に神経が損傷されることも、確かに起きうるでしょう。また、どんな手術でも、細菌の感染などの合併症を起こす可能性は、わずかにあります。
しかし、実際には、いままで200例以上この手術を経験してきましたが、重大な合併症を起こしたことは、幸いにも今まで一度もありません。顕微鏡で拡大しながら行う手術は、とても安全な手術だといえます。
2.手術の成功率は高く、劇的な改善も期待できます。
この手術自体は、決して新しいものではありませんが、顕微鏡を使って侵襲の少ない手術に発展してきたのは、最近のことです。私自身は、10年以上前から、この顕微鏡手術に取り組み、術式に多くの改良と工夫を加えてきました。現在では、8割以上の方で満足のいく症状の改善が得られており、劇的な改善もしばしば経験します。
腰椎椎間孔狭窄症は、非常に激しい痛みが特徴的ですが、手術が成功すれば、手術直後から痛みは消失します。痛みがとれると、患者さんの姿勢もよくなります。手術前は、痛みを和らげるために腰を前に曲げた姿勢を取られていた方でも、手術後は、腰をまっすぐにして立つことができるようになります。
腰椎椎間孔狭窄症の手術成績については、下記ページもご参照ください。
3.正しい診断を受けて、経験のある医師の手術を受ける必要があります。
この病気の難しい点は、診断が難しいということです。通常のMRIの画像は、特別に椎間孔に注意を払うようには撮られていません。なぜなら、この病気自体の認知度があまり高くないからです。また、医師の方も、よほどの専門家でない限り、椎間孔の病変にそれほどの注意を向けません。椎間孔に狭窄が起きうることは知っていても、それがとても微妙な画像所見で症状を出しうるということは、一般には知られていないようです。
私がこのようなことを言うのは、実際に、他院で診断を見逃されているケースを、多く経験してきたからです。先ほど述べたように、この病気では腰痛、下肢痛がとても激しい場合が多いのです。しかし、それが診断されないと、患者さんは治療を受けられずに放置されてしまうことになります。正しい診断を受けて、手術を受ければ症状が消失するにもかかわらずです。そのような状態で何年も痛みに苦しんでおられる方も、多くいらっしゃいます。
また、腰椎の固定術を受けた後、しばらくして、症状が再発するケースも、しばしば見受けられます。腰椎を固定することによって、その隣の関節に負担がかかり、その場所に新たに狭窄症が出現するためです。この場合、椎間孔狭窄症として症状が出てくる場合があります。この問題については、下記ページもご参照ください。
一人でも多くの患者さんが、良い手術を受けられて回復されることを祈っております。
よろしければ、下記ページもご参照ください
私でよろしければ、Contactに記載したメールでご連絡ください。
・約5年前から軽い腰痛および左足の痺れ感が始まりました。近くの整形外科受診したところ脊柱管を通る神経の圧迫からくる座骨神経痛で投薬治療(リマプラスト、メコバラミン、モーラステープ等)、牽引、電気等の理化学療法で治療実施してもらいましたが改善しませんでした。
・2年半位前から左足の痺れに加え右足にも痺れ感がでてきて、腰痛も左腰から左太ももにかけての重苦しい痛みもだんだん強くなってきました。
・そこで東京の整形外科専門医を受診しMRI,CT等の検査しL4/5/S1に狭窄があり
(L3/4にも軽い狭窄があり)それが原因でありしばらく保存療法(投薬、リハビリ)で様子を見ることになりました。
・約1年保存療法で経過を見たが症状は改善せず徐々に進行していることから1年半前(19,10 )にMEL( 内視鏡椎弓切除除圧術)でL4/5/S1の狭窄部の開放手術をおこないました。
・術後腰部の痛みと圧迫感はかなり改善しましが、左足の痺れは変わらず、しばらくして右足の痺れも強くなりました。
・最近は左右とも同じくらいの痺れで、徐々に強くなっています。
・主治医の話では痺れが取れないのはL5にすべり症があり椎間孔狭窄症が原因ではないかとことです。
・今月初めに両足の神経伝達速度測定した結果、左足の出が悪いとのことでした。また仙骨ブロック注射をしました。今のところ痺れに改善は見られません。
・現在投薬はメチコバール、リマプロスト、エチゾラム0.5(就寝前)です。
これまで術後の投薬はリリカ、リボトール、タリージェ、ノイロトロピンを順次使用しましたが効果はありませんでした。
昨年末術後1年たっても改善が見られないのでセカンドオピニオンを得たいと主治医に相談したところ快く了解していただき初診からの資料、画像データ等出していただきましたが、コロナの緊急事態宣言で行動に移せず資料等も手元にあります。
そのような状況ですがまことに恐れ入りますが先生のセカンドオピニオンをいただければと思っています。どのような手順でお願いすればいいか教えて下さい。
主治医は張先生にアポイントが取れれば紹介状を作成すると言ってくれてます。
よろしくお願いします。 以上
コメントをありがとうございました。
電話:0463-93-1121 (医療連携室)にお電話いただければ、外来の予約をお取りできます。
外来は、毎週木曜日です。紹介状と資料をお持ちいただければ、拝見いたします。
張 漢秀
その後も、痛みから、解放され、快適な毎日を送っています。
先生のブログを見て、先生にオスガリできて、本当に、幸せでした、ありがとうございました。
暑さまだまだ続き増すが、どうか、お身体を大切になさって下さい。
そして、痛みに苦しむ、多くの患者を、救ってください。
先生に、巡り逢えて、本当に良かった。薬から、解放されて~嬉しいo(^-^)oです。
脊柱管狭窄症馬尾型と右椎間孔狭窄型の混合で除圧固定術を14ヶ月前に受けました。一年後のMRIでは馬尾神経の拡張みられ順調と、ただ椎間孔のことは言及されませんでした。この数週間前から下肢の筋力低下を来し腰痛も酷くなり、今日予約外で受診しました。手術しても神経の損傷は改善せず麻痺は進行する事があるとの一点張りでした。手術して一年も経って症状が悪化する、そんな事はよくあるのでしょうか?またMRI画像で向かって右側、身体で言うと左側の骨削っている、椎弓切除しているでしょうと言われました。家に帰って調べたら、右側の狭窄で左側の椎弓切除というのは良く分かりません。2週間後にMRI撮る予定です。落ち込みます。自分の勘違いで有って欲しいです。ご意見お願いします。
固定術のあと、1年から数年して隣接椎間病変のための症状が悪化することはよくあります。ただ、K.H.さんの場合に、どういう状況なのかは、実際に診察して画像をみてみなければ、なんとも申し上げようがありません。状況によっては、除圧術の追加で症状を改善することができます。いずれにしても、MRI等で、症状の原因を突き止めることが第1だと思います。また、何かお役にたてることがありましたら、メールにてご相談ください。
2023.08.29兵庫医科大学病院でL5S1の開窓固定手術を終えコルセットを装着して2ヶ月に成ります。術前より悪くなって、困っています。ネットで先生の話を知り投稿させて頂きまました。歩くと右足膝下外側に痺れと激痛がはしり100mも歩けない状態に成ってしまいました。それと足裏砂利感痺れもあり、立っているのが、やっとの状態です。先生のクリニックにお伺いして当日ある程度の判断が頂だけたら、如何なものでしょうか?誠にかつて御願いですが何卒ご容赦ください。当方兵庫県尼崎市に在住しており遠方のためお許し下さい。
それはたいへんお困りですね。もちろん受診していただければ、当日検査をして、ある程度の判断はできると思います。遠方で申し訳ありませんが、ご検討ください。私にできるだけのことはしたいと思います。
大変お忙しい中早々のご返事ありがとうございます。もし診察して頂いて、手術が可能で有れば、最短でどれくらい待てばよろしいでしょうか?痛みも限界に近く、耐え難い状態です。不可能な事だと思いますが、何ゆえ遠方のためお伺いして直ぐにでも、そのまま入院できて、手術をして頂きたいくらいの気持ちです。先生の御返事次第で、当方出来れば10月24日火曜日にお伺い致したく思っております。誠に勝手な御願いですが早々の御返事お待ちしております。何卒宜しくお願いいたします。申し遅れましたが、本日10月21日MRI撮影で右側L4L5間に椎間孔狭窄が見つかり(兵庫医大でも指摘)、神経根ブロック注射の
結果一時的にせよ激痛が消滅しました。悩んでいるのは、手術方法が張先生の方法と違い、ルーペで患部を見ながらドリルで切除すると言うものでした。普通はこのような手術方法が一般的なものなのでしょうか?
現在、通常ですと手術は12月になります。ただ、(まだ画像も見ていない状態で、どのような手術ができるか確約はできませんが、)どうしてもということであれば、10月24日の午前中に大学病院の外来に来ていただければ、当日入院して、翌週のどこかで手術を組むことは可能かと思います。私は当日午前中しか院内にいませんので、できれば早めの時間に来ていただくことが必要です。
まだ、画像も見ていない状態ですので、確約はできない点はご了承ください。
今後のご連絡は、コメントではなく、「お問い合わせ」の方を使用してください。
65歳、男性です。初めまして、4年程前より左臀部の奥に痛みがあり歩行時にはあまり痛みは感じることはなかったのですが、午後になると痛みが強く出る症状が続いていました。福岡市の脊髄指導医のいる病院で半年毎のMRIによりヘルニヤや脊柱管狭窄症ではないと言う診断を受けていました。しかし、いっこうに良くなる傾向がなく最近では左臀部に力が入りにくい感覚により歩きにくい症状が出ておりました。主治医に相談してCT画像にて椎間孔に問題ありそうだと言われました。現状は歩行時の左足の感覚異常(痛みではなく)で長く歩けない事と安静時に左臀部の痛みが酷くなり日常生活に支障をきたし手術をお願いすることにしました。顕微鏡を使って骨を削る手術で削る箇所などの説明を受けて難しい手術ではあると言われました。その先生は固定術はあまりしないらしいのですが固定した方が簡単ではあるとも言われました。しかし何もせずにいることは厳しい状態になりつつあります。腰椎椎間孔狭窄症の手術は脊柱管狭窄症の手術よりも難しく神経を傷つける可能性が高いリスクの大きい手術なのでしょうか。不安が増大して質問させて頂きました。
椎間孔狭窄症に対する除圧術は、確かにかなり難しい手術で、経験が必要だと思います。ただ、「難しい」というのは、神経の損傷のリスクが高い、という意味よりは、十分な除圧を行って、コンスタントに良い結果を出すのが難しい、というニュアンスです。経験のある医師が、顕微鏡で手術をすれば、神経損傷のリスクは、かなり低いと考えてよいのではないでしょうか?
ご返信ありがとうございます。再度ご質問させてください。徐圧術で改善がない場合は、やはり再手術での固定術で神経圧迫を早めに解放する方がいいのでしょうか。
除圧が不十分になって、症状が改善しない、という可能性はありますが、その場合は、再除圧を行うことになるでしょうね。何れにしても、固定の必要性はありません。症状を良くするには、神経の圧迫を取ることが必要にして十分であり、固定は必要ではありません。神経の圧迫をとるのに、余計な骨や靭帯を削ってしまえば、脊椎の安定が悪くなって固定が必要になる、というだけの話です。脊椎の安定を保ちながら、なおかつ十分に神経の圧迫を取るというところに、技術があるのです。